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せきぐち – 2014年3-4月号

第二バチカン公会議公文書を学ぶ

今から半世紀以上も前、1962年10月11日に、カトリック教会にとって大きな分岐点となり、現代化に向けた改革の原点となった第二バチカン公会議は始まりました。この公会議の開催を決めたのは、まもなくヨハネ・パウロ二世とともに列聖される、時の教皇ヨハネ二十三世です。

ヨハネ二十三世は庶民派の教皇として知られ、ローマ市民はもとより、世界中の人々から親しまれ、深く愛された教皇でした(わたしは以前、公会議会期中に神学生としてローマで学んでいた経験をもつ幾人かの司祭にインタビューをしたことがあるのですが、ヨハネ二十三世の話になると、どの方も目を細めて、それこそ愛する家族の思い出を語るように話してくださった様子が、強く印象に残っています)。その教皇が、就任後わずか3か月足らずで、その後のカトリック教会の歩む道を決定づけることとなる、公会議の開催を決めたのです。それが周囲の枢機卿たちをいかに驚かせることであったかは容易に想像できます。当初は、翻意を促そうとした側近すらいたようです。

このことからも理解できるのですが、ヨハネ二十三世は強い牽引力と行動力を併せ持った教皇でもありました。世界中の人々が第二の核戦争勃発を現実のこととして恐れたキューバ危機の際には、東西両陣営の橋渡しとして重要な役割を担いました。5年に満たない短い在位期間ではありますが、その世界に与えた影響は多大なるものです。ヨハネ二十三世にとって最後の回勅となった『パーチェム・イン・テリス』には、社会に対する具体的な提言とともに、世界平和を希求する教皇の熱い願いと祈りとが切々と綴られています。

ヨハネ二十三世は、公会議の第1会期(1962年10月11日~12月8日)が開かれた翌年の6月3日に、第2会期の開始をまたずして世を去りましたが、その後はパウロ六世によって引き継がれ、公会議は1965年まで計4会期にわたって開かれ、その実りとして4つの「憲章」、9つの「教令」、3つの「宣言」が公布されました。

これら諸文書は、公会議終了後まもなくに、公会議に出席した日本の司教たちが主たる訳者となり、中央出版社(現サンパウロ)より分冊の形式で邦訳が出版され、後には、南山大学監修による訳文も出されました。しかし、その後の諸典礼書改訂版の日本語訳や新教会法典などの出版によって教会用語(訳語)の見直しが行われたことで、この公会議諸文書についても新たな訳文が求められるようになりました。昨年9月にカトリック中央協議会より刊行された『第二バチカン公会議公文書 改訂公式訳』は、そういった見直し等を反映させた新しい日本語訳です。

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ここであらためて確認しておきたいのですが、そもそも公会議とは何なのでしょうか。

公会議とは、全世界から司教が一所に会し、教義や典礼についての決定をなす、教会内の最高会議のことです。一人ローマ教皇のみが、それを招集することができます。その原点については、イエスの死後、その教えをいかにして広めるかを話し合うために使徒たちが開いた会議にまで遡ることができるようですが、とりあえずは325年に開かれた第一ニケア公会議が第1回とされ、第二バチカン公会議は21回目の公会議となっています。

さて第二バチカン公会議ですが、「第二」というからには、当然「第一」があります。第一バチカン公会議は、第二から遡ることおよそ100年前、1869年12月8日から1870年9月1日にわたって開催されました。バチカンのサンピエトロ大聖堂において開催された最初の公会議です。この会議では教皇の首位権と不可謬性が宣言され、『カトリック信仰に関する教義憲章』(Dei Filius)、『キリストの教会に関する憲章』(Pastor Aeternus)という2つの文書が公布されていますが、両憲章には、異端を排斥する条文が付加されています。

上記からも明らかなように、第二バチカン公会議以前の公会議というものは、主として、危険であると判断された誤謬を排斥することを目的として開かれています。

しかし、第二バチカン公会議は、それとはまったく性格を異にするものです。教会の刷新を図り「現代化」(イタリア語でアジョルナメントaggiornamento)を進め、また、現在は分かたれてしまっているキリスト教諸教会との一致を目指し、さらには諸宗教との対話を促進しようとするものであったのです。

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2月17日付で岡田武夫大司教は、日本カトリック司教協議会会長として「第2バチカン公会議の学びのすすめ~特に、『教会憲章』と『現代世界憲章』を読む~」という文書を発表しました。これは、昨年11月まで、第二バチカン公会議開幕50周年を記念して、前教皇ベネディクト十六世の発意により行われた信仰年における勧めを継承し、引き続き公会議の精神を学ぶよう、わたしたちを促すものです。公会議の全16文書のうち、憲章と呼ばれる4文書はもっとも重要なものとして位置づけられるものですが、岡田大司教は、本年と来年の2年をかけて、その中でもとくに『教会憲章』(Lumen gentium)と『現代世界憲章』(Gaudium et spes)の2文書を読み、学ぶことを勧めています。

個人での読書はもちろんのこと、小教区や各種グループでの勉強会や講座、講演会など、学び方にはさまざまな方法が考えられます。それら多様な用途の便に適うよう、カトリック中央協議会から2月末に、4つの憲章が3冊のハンディな書籍となって発行されました。『第二バチカン公会議公文書 改訂公式訳』は800ページを超える大部の書であり、それを読破することには多少尻込みしてしまう向きもあるかもしれませんが、こちらは各100ページ前後、薄い教科書といった感じで、手軽で持ち運びにも便利です。また、文庫本のように活字が小さいわけでもありません。

『教会憲章』と『現代世界憲章』は、カトリック教会の現代化を目指し、社会から遊離せず、社会と向き合い対話し、市井の人々とともにあろうとする教会の姿を強く打ち出した公会議の精神が、もっとも色濃く表れている文書です。それは、半世紀が経た今も、わたしたちにとっての確かな指針です。

教皇フランシスコは、内にこもることなく外へと出ていき、弱い立場にある人、排斥されている人、苦しむ人、貧しい人、あらゆる人々と関わりをもち福音をのべ伝える使命を、教会は、そして信者一人ひとりは与えられているのだと、事あるごとに訴えています。昨年11月に公布された使徒的勧告『福音の喜び』(Evangelii Gaudium:邦訳はカトリック中央協議会より刊行準備中)も、強くその理念に貫かれています。そのような教皇の導きに具体的にこたえていくためにも、この機会に第二バチカン公会議の精神をあらためて学ぶことが必要なのではないでしょうか。それは、単に知識を増やすことではなく、何かしらの実践へとつながる学びになることと思います。

(「せきぐち」編集部・奴田原智明)

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